週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2023年5月27日号
2023年5月22日 発売
定価 780円(税込)
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【特集】アニメ 熱狂のカラクリ

過去10年で市場規模は2倍以上に拡大――。日本にはそんな急成長産業があります。アニメです。映画では興行収入100億円超えの作品が続々登場するなど、今や国民的カルチャーになりました。動画配信サービスの普及で海外ファンも急増、大企業はアニメへの投資にアクセルを踏んでいます。一方で、アニメ制作現場が利益を得にくい構造や、横行するセクハラなどの根深い問題は依然として残ります。「アニメ『聖地』ランキング」、投資家必見の「アニメ四季報」も掲載。沸騰するアニメビジネスの最前線を徹底取材しました。

担当記者より

特集「アニメ 熱狂のカラクリ」を担当した森田です。最近、『すずめの戸締まり』と『THE FIRST SLAM DUNK』が中国で立て続けに大ヒットしたというニュースが、ネットやテレビを沸き立たせました。

これは一過性の現象ではありません。動画配信の普及で、日本アニメが世界に同時拡散するようになり、その市場規模は2021年に2兆7422億円。10年で2倍以上に成長しました。今の日本では数少ない成長産業です。

業界関係者を徹底的に取材する中、繰り返し問うたのが「アニメ業界のキープレーヤーは誰か」。そして、大方の返答は「集英社」と「ソニーグループ」に集中しました。

集英社は『週刊少年ジャンプ』を擁し、『鬼滅の刃』や『呪術廻戦』、『SPY×FAMILY』など、ヒット作を上げればキリがない「漫画王」。アニメプロデューサーたちは、飲み会やゴルフに同社の編集者を誘い出し、必死にアニメ化の権利獲得を図ります。

エレキからエンタメへと大転換したソニーグループは、アニメ『鬼滅の刃』シリーズを仕掛けたプロデューサー集団・アニプレックスと、日本アニメの配信で世界最大級のクランチロールを傘下に抱えています。有力なアニメスタジオも持ち、アニメの企画・制作から配信まで、バリューチェーンを超一流企業でカバーしています。

そして今、業界内で密かに注目されているのが、両社の関係性です。集英社とソニーは、アニプレックスを介した“蜜月”関係で知られており、近年も異例の合弁企業が組まれています。ただ、強くなりすぎたソニーグループを警戒し、集英社が人気原作を他社に振り分けるのではないかと、アニメプロデューサーたちが手ぐすねを引いているのです。

今回の特集では、こうした大企業を取り巻く様相から、アニメーターや声優の労働・ハラスメント問題まで完全網羅しました。アニメと関係性の薄いビジネスパーソンにも、思わず読み込んでいただけるように、面白く、そして生々しく作り込めたと自負しています。特別付録には「アニメ四季報」も。どうぞご笑覧ください。

担当記者:森田 宗一郎(もりた そういちろう)
2018年4月、東洋経済新報社入社。文房具やキャラクター、パチンコ、出版、ラジオ業界などを取材。過去には工作機械・ロボットやドローン、エアライン、ホテル・旅行・テーマパーク、カジノ業界などを担当。

>>週刊東洋経済編集部の制作にかける思い

目次

特集
アニメ 熱狂のカラクリ

part1 熱狂!アニメマネーの全貌
10年で市場規模は2倍以上に アニメマネー、世界で乱舞
[インタビュー エンタメ社会学者のアニメ産業展望]
海外市場5兆円へ、課題は「ビジネス人材」不足 Re entertainment 代表 中山淳雄

製作委員会は「カネ余り」 プロダクションは「豊作貧乏」
出版社がボロ儲け 狂乱のIPバブル
[コラム]「パチンコ」アニメ版権の明暗
[インタビュー]バンダイナムコホールディングス 社長 川口 勝

アニメーター賃金に異変 氷河期から「二極化」へ
[トップインタビュー]アニメ制作スタジオの風雲児 2社が挑む「業界の悪習」打破
トムス・エンタテインメント 社長 竹崎 忠/MAPPA 社長 大塚 学
セクハラは依然「日常」 声優たちの過酷な境遇 ジャーナリスト 辻 麻梨子

part2 アニメで攻める日本企業
[ソニー×アニメ]ソニーが築いた「アニメ帝国」の凄み
[動画配信×アニメ]「黒船」はなぜ失速したか ネットフリックスの反省
[音楽×アニメ]超一流アーティストがアニソン「全集中」の必然
[テレビ局×アニメ]脱広告依存で加速 テレビ局のアニメ戦争
[映画会社×アニメ]東宝が「本気モード」 横綱・東映を猛追
[玩具×アニメ]グッズの海外進出 困難を極める事情
[中国×アニメ]市場も技術も急成長 中国アニメの脅威

part3 アニメを知ろう!生かそう!
ビジネスパーソンが押さえるべき 最新教養アニメ20
[コラム]劇場版『コナン』ヒット連発の裏側

[トップランナーの推しアニメ1]『プラネテス』ほか サイバーエージェント 執行役員副社長 日高裕介
[トップランナーの推しアニメ2]『Dr.STONE』ほか 東京大学大学院経済学研究科 教授 小島武仁
[トップランナーの推しアニメ3]『未来少年コナン』ほか BNPパリバ証券 経済調査本部長 河野龍太郎

[独自集計]途切れない誘客に称賛  「アニメ聖地」ランキング
  “聖地”がうらやむ日本の「アニメ聖地」ベスト20
[コラム]「元祖聖地」は放送15年後も活況

  AIはアニメ制作をどのように変えるか
[特別付録]こんなにある! 珠玉のアニメ関連銘柄 「アニメ四季報」

スペシャルインタビュー
サントリー社長 鳥井信宏
サントリー創業家が抱く「酒類日本一」の野望

ライバルは「スーパードライ」や「一番搾り」 激戦区に投入する新商品の成否

ニュース最前線
シャープ6期ぶり赤字転落 子会社の不可解な巨額減損
ユニゾの倒産劇に「新展開」 迫る旧経営陣への責任追及
「コロナ過大請求」で荒稼ぎ 近畿日本ツーリストの代償


連載
|経済を見る眼|年収の壁と「厚生年金ハーフ」の重要性|藤森克彦
|ニュースの核心|北朝鮮の「アフターコロナ」時代はいつ来るのか|福田恵介
|発見! 成長企業|サンクゼール
|会社四季報 注目決算|今週の4社
|トップに直撃|積水ハウス 社長 仲井嘉浩
|フォーカス政治|共産党委員長に問う拙著批判の根拠|中北浩爾
|中国動態|超高齢化に備えツムラが老舗買収|田中信彦
|財新 Opinion & News|農村での過剰権力行使に批判、規則順守徹底を
|グローバル・アイ|立憲君主制に万歳、その知られざる効用|トム・ギンズバーグ
|Inside USA|ポストコロナの米国、もろ手を挙げて喜べるか|瀧口範子
|FROM The New York Times|K-POPアイドルへの憧れで 米国を席巻する男性パーマ
|マネー潮流|国内債シフトからみるYCC抜本修正|森田長太郎
|少数異見|邱永漢が教える台湾人の悲劇
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|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法⑪|佐藤 優
|経済学者が読み解く 現代社会のリアル|金融政策・金融教育による バブル抑制の可能性|木成勇介
|話題の本|『失くした「言葉」を取り戻すまで 脳梗塞で左脳の1/4が壊れた私』著者 清水ちなみ氏に聞く ほか
|社会に斬り込む骨太シネマ[新連載]『渇水』
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