週刊東洋経済

情報量と分析力で定評のある総合経済誌

担当記者より
2025年4月26日・5月3日合併号
2025年4月21日 発売
定価 950円(税込)
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【特集】ホテル 高級化大戦


インバウンドの急増を受けて加速する外資系の進出ラッシュを受けて、ホテル業界が新局面に突入しています。規模で勝る外資系に国内系が対抗するすべはあるのでしょうか。本特集では、迎え撃つ国内名門ホテルの戦略や差別化で勝機を見いだそうとしている中小ホテルの取り組みなど、ラグジュアリー領域で競争が激化するホテルの最前線に迫りました。また、普段見る機会が少ない超高級ホテルの内部に潜入したほか、この夏お薦めのプチラグジュアリーホテルも紹介します。

担当記者より

特集「ホテル 高級化大戦」を担当した木皮透庸です。

 小誌がホテルを特集するのは2023年5月以来、約2年ぶりです。前回の特集タイトルは「ホテル富裕層争奪戦」。今、富裕層争奪をめぐる競争はより激しさを増しています。要因は言うまでもなく、インバウンド(訪日外国人客)の急増です。

 2024年にインバウンドは3686万人と過去最多を記録。今年1~3月では1053万人となり、過去最速で1,000万人を突破する活況ぶりです。個人的に参加した3月の東京マラソンでは参加者の半数近くを外国人が占め、「インバウンド沸騰」を肌身に感じたのでした。

 今や東京や京都の宿泊の半分は外国人。外国人富裕層の長期滞在需要を獲得しようと、高級化の競争は新次元に突入しています。その一番象徴的な動きが、ヒルトン最高級ブランド「ウォルドーフ・アストリア」の日本初進出です。万博開幕に合わせて4月に開業した大阪の新ホテルは、大手旅行予約サイトで1泊2名朝食付きの宿泊単価はおおむね13万円以上。大阪では頭一つ抜ける価格で、まさに高級化をリードする「本命」が登場したと言えます。ヒルトンのアジア太平洋地域社長に直撃し、日本市場に着目する理由を聞きました。

 特集では、外資系と国内系のホテルの運営形態の違い、そのメリット・デメリットを丁寧に解説。大阪や京都における高級ホテルの進出状況、外資系ラグジュアリー誘致に積極的な日系デベロッパーの思惑や、ホテルに群がるファンドの動きにも迫っています。

 攻勢を強める外資系に対し、国内勢はどう迎え撃つか。国内名門ホテル4社(帝国ホテル、パレスホテル、西武・プリンスホテルズワールドワイド、東急ホテルズ&リゾーツ)のトップにインタビュー。帝国は京都開業を来春に控え、東京の建て替えも進めています。パレスは台湾の老舗ホテルと提携する形で海外初進出の予定。それらの狙いや進捗状況についても深掘りしています。2028年に温泉旅館で米国に初進出する星野リゾート。「温泉旅館の運営が唯一、北米で事業を拡大していく方法」と星野代表が言い切っていたのが印象的でした。

 自社の強みをどう磨き、消費者に訴求するか。この視点は経営規模を問わず、各社に求められています。インバウンド増の追い風がある今だからこそ、経営者は思い切った戦略を取れるはず。そんな考えから「差別化でキラリと光る中小ホテル」にも光を当てました。

このほか、「10万円でも泊まりたい高級ホテル7選」「5万~7万円のプチラグジュアリー5選」など、ワクワクするコンテンツも満載です。ホテル業界の関係者はもちろんのこと、ホテルの高級化に関心のある多くの方にぜひお手に取っていただきたいです。

担当記者:木皮透庸(きがわ ゆきのぶ)
1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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『週刊東洋経済』は、変化する世の中を確かな視点で解明する総合ビジネス週刊誌です。

創刊は1895年(明治28年)、日本国内で最も歴史のある週刊雑誌でもあります。企業戦略から主要業界事情、国内外の政治経済はもちろん、近年はビジネス実用、テクノロジー、社会問題まで、経済の複雑化やビジネスパーソンの関心の広がりに対応し、幅広いテーマを取り上げています。

一方で創刊以来、一貫しているのはセンセーショナリズム(扇情主義)を排除し、ファクトにこだわる編集方針を堅持することです。「意思決定のための必読誌」を掲げ、今読むべき特集やレポートを満載し、価値ある情報を毎週発信しています。

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約3,900社の上場企業すべてに担当記者を配置。財務情報から海外進出情報など『会社四季報』ならではのデータベースから独自の切り口で深掘りし、分析した連載や特集を『週刊東洋経済』で展開しています。

目次

特集
ホテル 高級化大戦

Part1
超高級ホテルの世界

ラグジュアリー研究の第一人者が選ぶ! 10万円でも泊まりたい 高級ホテル7選!
 ホテルニューオータニ(東京)/リヴェルト京都鴨川/都ホテル 博多/
 SHIROYAMA HOTEL kagoshima/ryugon/パレスホテル東京/天空の森
泊まってみたい! 帝国ホテルで「国賓待遇」1泊135万円プランの全容
相次ぐ新規就航! ファミリー層を照準に
[コラム] 日本人の海外旅行が高額消費化

Part2
外資系が沸騰

ホテルビジネス徹底解説
 
大阪・京都で開業ラッシュ
 外資系大手の客室数は100万室超え
[インタビュー]
「地方空港の整備が必要だ」
HANATOUR JAPAN(ハナツアー ジャパン)社長 金 尚昱/同 取締役 李 炳燦
「自社ブランドの展開も検討」
パン パシフィック ホテルズ グループ上級副社長 ケビン・クローリー

ヒルトン最高級ブランドの全貌
 大阪・高級ホテル頂上決戦の本命 ウォルドーフ・アストリア大阪
[インタビュー]
「日本市場には強気、今後10年で100軒に」
ヒルトン アジア太平洋地域社長 アラン・ワッツ

膨張する外資系 ビジネスホテルにも触手
訪日客増が追い風 外資系ホテルに見いだすデベロッパーの勝ち筋
ファンドがホテル続々取得の背景
熱海・老舗リゾートの末路

Part3
迎え撃つ日本勢

攻めか守りか 分かれる国内名門の戦略
[コラム]星野代表が明かす「グランドホテル再生論」
[トップインタビュー]
国内名門ホテル4社 トップに聞いた勝ち筋
 帝国/パレス/プリンス/東急
[インタビュー]
星野リゾート代表 星野佳路
「30年後には米国全土に温泉旅館ができる可能性も」

経営力で勝つ 差別化でキラリと光る中小ホテル
空白市場を積極開拓 4つ星に特化 カンデオの戦略
[インタビュー]
立教大学特任教授 沢柳知彦
「国内ホテルは費用削減徹底、 参入障壁高い差別化も重要」
ゼネコン・サブコンが選別受注 新規出店にブレーキ ビジホの苦悩
[インタビュー]
アパグループ社長兼CEO 元谷一志
「3大都市圏と“札仙広福”を深掘り」

有識者が選ぶこの夏お薦め 5万~7万円! プチラグジュアリー5選
 関西ホテル事情 万博開幕で懸念高まる大阪のホテル不足
「インバウンド急増」の光と影
ビジホの記録的高騰に悩む出張族
ザ・リッツ・カールトン日光 地域連携型の観光戦略で攻勢

スペシャルインタビュー
鴻海精密工業 最高戦略責任者(CSO) 関 潤
「鴻海は日本を最重要視している」

EV子会社はずっと赤字 エレキの巨人・鴻海の実像

NEWS&TOPICS最前線
ミネベアミツミが名乗り 芝浦電子に“友好的TOB”
ワタミ流の新生サブウェイ スキマバイトで狙う再成長
日本郵政・増田氏が退任へ 「火中の栗」拾う次期社長


連載
|経済を見る眼|新卒採用好調の裏で若年無業者が増加|太田聰一
|ニュースの核心|理不尽なトランプ関税を変革のチャンスに|山田雄大
|トップに直撃|あらた 社長 東風谷誠一
|フォーカス政治|独善トランプ、三権分立危機に瀕す|軽部謙介
|マネー潮流|今こそ株式投資に貪欲たるべき理由|阿部健児
|中国動態|「わが事に専念する」中国の意図|加茂具樹
|財新 Opinion&News|EV急成長シャオミ、8000億円調達の狙い
|グローバル・アイ|中国経済「停滞の元凶」は経済対策の連発にあり|ケネス・ロゴフ
|Inside USA|2026年中間選挙に共和党が危機感を抱く理由|安井明彦
|少数異見|トランプ2.0は歴史観に基づいている
|ヤバい会社烈伝|フェンダー アパレルを超える! 世界初の旗艦店|金田信一郎
|知の技法 出世の作法|佐藤流・情報の収集と分析の手法 101 |佐藤 優
|経済学者が読み解く現代社会のリアル|勤勉な人から浪費家へ? その再分配は正しいか|宮城島 要
|話題の本|『揺らぐ日本のクラシック 歴史から問う音楽ビジネスの未来』 著者 渋谷ゆう子氏に聞く ほか
|名著は知っている|『全体主義の起原』[上編]
|社会に斬り込む骨太シネマ〔最終回〕|『ハッピー☆エンド』
|ゴルフざんまい|使いこなす能力ないと道具は「猫に小判」|中嶋常幸
|西野智彦の金融秘録|「銀行不倒神話」の誕生と終焉④
|編集部から|
|次号予告|

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  • 10/27(月) 週刊東洋経済 2025年11月1日号